診療データ共有 形骸化 日本経済新聞
IT(情報技術)を活用した医療の効率化がかけ声倒れになっている。診療データを病院間で共有する全国約210の地域ネットワークの登録患者数は、国内人口のわずか1%であることがわかった。国と自治体は医療費の抑制や患者の利便性向上を狙い、計530億円を超す公費を投じたが、重複医療を解消する効果が出ていない。医療IT政策の仕切り直しが必要だ。
(関連記事・調査の概要を経済面に)
患者が病院や診療所を移ると、検査や治療、薬の処方が重複するケースがある。非効率な医療は患者の身体的な負担や医療費増につながる。これを防ぐには病院間のデータ共有が有効とされ、国は地域医療情報連携ネットワーク(総合2面きょうのことば)の整備を促してきた。中核病院や医師会が運営し、電子カルテや検査画像、処方箋を共有する仕組みだ。
日本経済新聞は「地域医療介護総合確保基金」などの補助金を受けたネットワークを調べた。その数は211。北海道の44が最も多く、大阪の23、東京の17と続く。2009~17年度の補助額は計532億円で、福島が最多の116億円だった。
登録患者・参加施設数は運営者や自治体に聞き取り、191事業に関する回答を得た。薬局や歯科を含む参加施設は2万9500と、全施設の12%。登録患者は137万2千人にとどまる。福岡県医師会のネットワークは約8千人の登録で、17年の県議会で明かされた「25年度に29万人」の目標にはほど遠い。
そもそも日本は電子カルテが普及していない。病院と診療所の普及率は3割台。データ共有の環境が未熟で、英国やオランダが9割を超すのと対照的だ。東京都内のある病院職員は「医療ミスや過剰治療の発覚を恐れ、外部に診療内容を見せたくない医師は多い」と医療の閉鎖性を指摘する。
情報共有に患者の同意が要ることも壁だ。首都圏の医師会によると「医師は患者に説明する手間をかけたがらない」。18年春に稼働予定だったネットワークの参加がいまだゼロの名古屋市の病院は「情報漏洩を恐れる施設が多い」としている。
総合確保基金は14年の消費増税に伴い創設された。医療分野は病床再編や在宅医療推進など地域医療体制の充実に使う。その一環で国は医療のIT化を促してきたが利用率は期待を裏切る。公費投入のメリハリを欠き、病床再編も遅れている。
医療先進国といわれるオランダは12年に全国で医療情報を交換するシステムをつくった。患者がいつでも見られるように透明性を高め、国民の8割が参加する。米国では患者データをインターネットで管理・閲覧できる仕組みが普及している。
厚生労働省は20年度にも全国共通のネットワークを整える方針。地域別のIT政策を事実上転換するが、既存ネットワークの検証には後ろ向きだ。「一元化」ありきで事を進めれば、過去の投資はムダになる。患者の同意や医師の理解を得やすくするソフト面の対策も必要だ。(上林由宇太)
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日本経済新聞 3/10 朝刊 1面 【復興の主役 官から民へ】
東日本大震災の発生から11日で8年を迎える。原発事故の影響はなお色濃く残るが、巨額の政府予算の投入で被災地のインフラ整備や住宅再建は一定のメドが付いた。ただ、沿岸部では定住人口の減少が止まらず、「官製復興」には限界がみえる。成長のエンジンを民主導に切り替えるには地域の底力が試される。
岩手県の内陸に位置する北上市で2018年7月に始まった東芝メモリの新工場建設。行き交う大型トラックに地元企業は目を見張る。投資額1兆円は東芝メモリにとって最大規模だ。関連企業が次々と進出し、市内の賃貸物件の賃料は瞬く間に7~10%上昇した。
沿岸・内陸に格差
震災から8年がたち、津波で甚大な被害を受けた沿岸部とそれ以外の内陸部の経済格差が目立ってきた。自動車や半導体の大型投資で勢いを増す岩手、宮城の内陸の一部とは対照的に、沿岸部の再生への足取りは鈍り始めている。
「補助金を使ったことを後悔している」。冷凍食品製造のヤマトミ(宮城県石巻市)の千葉雅俊社長はこう話す。15年に15億円で新工場と加工ラインを導入。投資額の8分の7を賄ったのが、国の復興関連の補助金だった。だが足元の売上高は震災前から半減。自己負担で借りた2億円の債務返済が重くのしかかる。
国は被災企業に手厚い金融支援を講じた。債務の減免のほか、投資額の4分の3や8分の7を援助する補助金などだ。公的資金で多くの被災企業が立ち直る一方、身の丈を超えた設備投資を可能にした債務が経営負担となる例もある。
【国の復興関連の補助金】
▽…国は東日本大震災からの復興を後押しするため補助金制度を設け、企業の設備復旧や工場立地、新規事業などを支援している。代表的なのが「グループ補助金」だ。通常の自然災害で工場などが被災しても私有財産の復旧に公費は出せない。しかし、震災時は自力再建が困難なうえ、地域経済にも深刻な影響が及ぶことから特別に設けた。
▽…被災した企業が工場や店舗の復旧目的で複数のグループをつくり、計画を各県に提出する。条件を満たせば国と県が費用の4分の3を補助する。震災関連では2018年12月末時点で、1万1595社に対し、総額5163億円が支出された。
▽…水産加工業者の復興を目的にした補助金も設けている。複数の事業者がグループをつくり申請した事業計画を審査し、事業費の8分の7を補助する。グループ補助金が既存施設の復旧が目的なのに対し、水産加工業者向けは新規の設備投資が対象。地元で水揚げした魚を使うことや雇用を増やすことが要件となる。津波や原子力災害被災地を対象とする補助金は企業の工場立地費用を補助する。
日本経済新聞 2019/3/8 朝刊 【リース取引 資産計上へ】
【リース取引】
機械や設備を購入せずに一定期間借りて利用する取引。
借手はリース期間(借りた期間)分をリース料(使用料)として払い、貸手はそれを受取るような取引のこと。
今までは企業の貸借対照表(B/S)に記載する必要は無かったが、ルールが変わればリースの金額を明記する必要が生じる。
資産効率を表す指標は数値上悪化するが、財務の透明性は高まる。
ルールが適応されれば、幅広い職種に影響が出る。
一般会計101兆円 最大に 2018/12/13 (日本経済新聞)
政府は2019年予算案の編成
歳出→約101兆円(過去最大)
歳入→62兆円超(過去最大)
借金頼みの財政状況は変わらない。